いろんな『散っていったクルマ』たちがいたけれど、やっぱりクルマ好きの心に残る名車ってのがあるもので……。散り際の美学を感じる「華々しく散っていった」クルマたちの思い出を本誌ベストカー名物座談会で振り返る。(本稿は「ベストカー」2014年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏、鈴木直也、片岡英明
アルシオーネSVX NSX WiLLシリーズ…… クルマのプロたちの心に今も残る 華々しく散っていったクルマたち【ベストカーアーカイブス2014】
【画像ギャラリー】座談会・心に残る、華々しく散っていったクルマたち(3枚)
■本来の金儲けとは違った理由から誕生したクルマは心に残る
アルオーネSVX…アルシオーネの2代目。2.2L水平対向4気筒エンジンに2気筒足した3.3Lを搭載していた。1991年にデビューし、1996年に消滅した
【編集部】インサイトの生産が打ち切られます。ハイブリッドカーとして期待されてデビューしたものの、プリウスに大差をつけられ舞台から去るわけですが、このように力およばず敗れ去っていったクルマたちを特集してきました。その締めとして、皆さんの記憶に残る、華々しく消え去ったクルマを挙げていただき、その思いをお聞かせください。
【国沢光宏、以下国沢】インサイトほど“酷い”クルマはない。初代は大力作。あれだけ一生懸命作ったクルマで、アルミでボディまで作って売れなかった。2代目も唸るような大空振りでしょ。空振り二発。あれに匹敵するクルマはない。
【鈴木直也、以下鈴木】自動車メーカーはお金儲けが基本テーマだから、「こんなクルマ出したら売れるよね」というプログラムに基づいてクルマを作る。しかし、例えばライバルメーカーへの意地だったり、規制をクリアするために必要だったり、モータースポーツのベースになったりと、本来の金儲けとは違った理由から誕生したクルマもある。それが役割を終えた時、消えていくことが多いね。
【片岡英明、以下片岡】そんなクルマは心に残るし、10年、20年後、「あのクルマよかった」と再評価されるケースもけっこうある。
【鈴木】バブル期には多かった。
【片岡】元気な頃の日本はそんなのばっかり。隙間を突いて面白いクルマが登場してきた。
【鈴木】それが意地だったりメーカーとしての威信だったり、商売から離れたところに動機があったりするわけだ。
【編集部】それでまず思い浮かぶクルマは?
【鈴木】アルオーネSVX。
【全員】あははは!
【片岡】あれは気合い入っていましたね。エンジンまで新開発で作っちゃったから。水平対向6気筒。3.3Lでした。
【鈴木】あれはすばらしかった。いまでも、「あのクルマよかったよね」というイメージしか残ってないもの。ジウジアーロの気合いの入ったデザインスケッチがそのまま製品化された。
【編集部】スバルはどういう心理状態だったのでしょう?
【鈴木】ウチもスペシャルティラグジュアリーがほしい。ソアラがほしいってことでしょ。
【片岡】最初は5ナンバーのスペシャルティということでジウジアーロに依頼した。ところがソアラが3ナンバーになったものだから、わざわざ幅を広げて出してきたんです。
【国沢】ホンダという会社は、世間知らずの子供みたいなところがある。NSXだって本気でポルシェやフェラーリに勝とうと思ったんだろうね。
【鈴木】それが続かないところが残念というか不満。
【国沢】NSXこそ空振りって感じがする。
【鈴木】やっぱり意地を見せるというのは大事なことですよ。
【国沢】しかし意地を見せきれなかった。世間知らずの子供でも覚悟ができるかどうかですよ。覚悟ができていないのに突っ走ったのがNSXであり、アルシオーネSVX。
【鈴木】バブル期には、日本車が天狗になった部分があるじゃない。「ひょっとしたら俺たち世界一じゃない?」みたいな。コスモの3ローターなんかまさにそれでしょう。
【片岡】インフィニティQ45もちょっと……ね。
インフィニティQ45…日産のフラッグシップモデルとして登場。漆塗りのインパネを採用して高級感を演出した。後期型ではフロントグリルを設けている
【鈴木】あれは戦略的なミスだと思うな。あのグリルレスのデザインは決定的なミスでしょ。
【編集部】1989年ですよね。時を同じくして、セルシオとQ45が登場しています。
【鈴木】片や世界を代表する高級車に育ったのにね。
【国沢】1989年、1990年は日本車のヴィンテージイヤーと言われるけど、ヴィンテージに裏側にはハズレのクルマもけっこうありました。ホンダが多い。デルソル、Zもそうだ。
【鈴木】2代目Zな。
【片岡】床下にエンジンを積んだヤツですね。
【国沢】あとクロスロード、ハマーみたいな。あれも1代で終わっちゃった。
【片岡】エディックスだってそうじゃない。3人掛けの。
【国沢】ホンダ多いでしょ。
【鈴木】それはいいことだと思う。なんのチャレンジもしないで、業界標準的なクルマを作ってたんじゃつまらない。それで会社がなくなっちゃったら大変だけど、3発か5発に1発くらいヒット作を出して、ホンダは頑張ってるんじゃない。
【編集部】ほかのメーカーはどうでしょう。
【鈴木】トヨタが比較的よくやるんだけど、要するに観測気球を上げるわけだ。世の中のトレンドが大きく変わり始めた時に、そっちに一気に行くのは怖いから、まずアドバルーンを上げて様子をみようと、そのひとつがターセル/コルサの縦置きのFF。あの時点で縦置きは世界的に見ても考えないでしょ。
【国沢】トヨタといったらWiLLでしょ。WiLLはある意味華々しかったな。
WiLLブランドは2000~2002年に相次いで3車種を投入した。写真は第3弾のサイファ。リアのデザインが特徴的だ
【片岡】金かけてますよ。3車種も作った。Vi、サイファ、VS。
【国沢】トヨタ最大の失敗作。買ったユーザーがババ引いてる。
【鈴木】ヴェロッサ、ブレビスもマークIIをなんとか延命させなきゃいけないというトライのなかで消えていったね。
【国沢】プログレもそうだ。「小さい高級車」って言われて買った人はハシゴを外された。
【片岡】派生で観音開きのオリジンなんてのも作った。
【鈴木】トヨタはそういう意外な失敗やってるな。
【国沢】日産もハズレ多いと思うよ、スタンザなんか典型的だ。
【鈴木】日産のハズシとしてルネッサを挙げたい。室内でスキーができそうな傾斜フロア。
【国沢】ルネッサだけじゃなくてバサラも外してる。最初にみたときサラバだと思った。(笑)
【鈴木】あの頃の日産が一番ダメな時期。ルネッサの月販目標台数はたしか4000台。誰も4000台売れると思っていないのに、数字の辻褄あわせだけで作っちゃう。
【編集部】スバルは軽自動車から撤退しましたが、それとは関係なくR1やR2もハズシてます。
【鈴木】R2までは許すけど、R1はよく出たよね。
【片岡】なぜ同じ路線にしたのか。例えばハイト系とスポーツ系とか違う路線ならわかる。
【鈴木】帝国陸海軍の伝統を受け継いでいる。零戦と隼だよ。似てるけどちょっと違うみたいな。
【国沢】零戦と隼は違うでしょ。
【片岡】スズキにもX90がある。ツインだって「名車」です。
【国沢】スズキの一番の失敗作はキザシだと思う。
【鈴木】キザシは撤退する勇気が素晴らしかった。
【片岡】鈴木修会長の決断です。
【鈴木】三菱にもひっそり消えていったクルマは多い。プラウディア、ディグニティなんか出てすぐ消えました、というかプロジェクトが止まらないから出した珍しいクルマ。
【国沢】ヒュンダイとの絡みがあったから、日本市場はどうでもよかった。iが出てきたのだって、ベンツとの絡みでしょう。
【編集部】1990年前半のマツダも乱発でした。MS-6、MS-8、MS-9、クロノス、ユーノス100、500、ペルソナが出てます。
【鈴木】5チャンネル体制にして、会社自体が花火のように散りそうになった。
【国沢】エチュードもあった。
【鈴木】よくそれだけのむちゃをした。だれも止めなかったのが今となっては不思議。
【国沢】どのクルマも急造感が否めなかった。難しいんだな、あれだけいっぺんにクルマを作るのは。一球入魂じゃないと!!
【鈴木】繰り返しになるけど、チャレンジすることが重要で、いままでのチャレンジが日本車を豊かにした。ハズシこそ日本グルマの文化。
【編集部】まとめの言葉が出たところで終わらせていただきます。ありがとうございました!
(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)
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SVXはアマチュア天体観測家、天体写真家の藤井旭氏がオーナーだったのを覚えている。星つながりで格好良かった。