ロックの神様、エリック・クラプトン卿の愛したフェラーリBB
ヨーロッパやアメリカの一流オークションハウスが主催するオークションには、著名なセレブレティたちの「元愛車」たちがけっこうな頻度で出品されています。2025年4月13日、英国チチェスター近郊のグッドウッド・サーキットにて開催されたエクスクルーシヴなレースイベント「グッドウッド・メンバーズミーティング」。その公式オークションとして行われた、名門「ボナムズ」社の「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションでは、音楽界の世界的スーパースター、エリック・クラプトンCBEが新車として購入し、そのアルバムジャケットにも姿を見せたフェラーリ365GT4/BBが出品されました。世界中で大きな話題を提供することになりました。
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ふたつの伝説、フェラーリ365BBとエリック・クラプトンCBE
1971年にコンセプトカーとしてデビューのち、1973年に正式発表。その数年後、1970年代後半に日本で沸き上がったスーパーカーブーム時代には、不倶戴天のライバルであるランボルギーニ「カウンタックLP400」と覇権を争った365GT4/BBは、12気筒ストラダーレとしてはフェラーリでも初となるミドシップ車だった。
現代の目でも見惚れてしまいそうな斬新さにくわえて、ディーノ206/246GTの係累であることを物語る古典的エレガンスもあわせ持つボディは、もともと1968年にピニンファリーナが発表したスタディモデル「P6」の生産型であるともいわれている。
有名なペットネーム「BB(Berlinetta Boxer)」にも示されるとおり、前任モデルにあたる「365GTB/4デイトナ」用に新設計された、排気量4390ccの60度V型12気筒DOHCエンジンのVバンク角を180度まで拡大。4基のトリプルチョーク式ウェバー気化器が組み合わされて、380psのパワーを発揮する。
そしてパワートレーンの前後長を短く抑えるため、エンジン直下に2階建て構造に配された5速MTを介して302km/hの最高速を公称していた。
総生産台数387台のうち58台が英国仕様
ただしこのカタログデータは、365GT4/BBがデビューする半年前に最高速度300km/hを標榜して挑戦状を叩きつけてきたライバル、カウンタックLP400を上まわることだけを目的に設定された政治的数値というのが今や定説となっているようだが、それでもBBの魅力の前には何らの問題ともなりえないともいえよう。
387台(ほかに367台説などもあり)が製作されたといわれる365GT4/BBのうち、このオークション出品車のような英国マーケット向け右ハンドル仕様は、わずか58台のみとされている。さらにこの個体の付加価値を高めているのは、やはり「元エリック・クラプトンの愛車」という唯一無二のヒストリーといわねばなるまい。
エリック・クラプトンCBE(2004年に叙勲・CBE=大英帝国勲章)は、まさしく生ける伝説的なミュージシャン。日本独自の称号らしいが、ジェフ・ベック(ヤードバーズやジェフ・ベック・グループなど)とジミー・ペイジOBE(レッド・ツェッペリンなど)と合わせて「世界三大ギタリスト」、しかもその筆頭格に列せられるとともに、「ロックの神様」あるいはグラミー賞を受賞した名作「アンプラグド」の大ヒット前には「エレキギターの神様」とも呼ばれてきたである。
また、現在ではフェラーリの熱心な愛好家としても知られ、2014年にはフェラーリ公式のワンオフ・プログラムにより、世界で1台のみの「SP12EC」を製作させたことでも話題となった。そのワンオフ車両のモチーフとなったのが、今回のオークションに出品された365BBだったのだ。
3300万円オーバーは、むしろリーズナブル……?
今回のボナムズ「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションに出品されたフェラーリ365GT4/BBは、英国向けに右ハンドル仕様で製造された58台のうちの1台。1974年11月に生産され、イギリスの伝説的フェラーリ正規代理店「マラネッロ・コンセッショネアーズ(Maranello Concessionaires)」社を介して輸出されたものである。
ボディカラーはシルバーメタリック「アルジェント・オートゥイユ(Argento Auteuil)」に、インテリアは「ネロ(黒)」のレザーハイド張り。カーペットはインテリアと同色でオーダーされた。
当時クラプトン卿のマネージメントを行っていた「ロバート・スティグウッド・グループ(Robert Stigwood Group Ltd)」社と、マラネロ・コンセッショネアーズのKonig氏との間で交わされた書簡によると、クラプトンのもとに納車されたのはこの年の12月24日で、ちょうどクリスマスに間に合ったことが確認されている。そして、翌1975年1月に「GPM 446N」のナンバーで登録された。
クラプトンがフェラーリを注文したのは、同じくレジェンド級ミュージシャンである親友、ジョージ・ハリスンMBEがハートウッド・エッジの邸宅に同型車を持ち込んだのを見て、影響を受けたからといわれる。ところがクラプトンは、念願のフェラーリをわずか43マイル(約79km)走らせたところで、事故に巻き込まれてしまう。この段階で、クラプトンは365BBを放出することを決意していたようだ。
今回のオークション出品者である現オーナー(故人)は、中古車情報誌「Exchange & Mart」に掲載された広告を見て、元クラプトンのベルリネッタ・ボクサーを幸運にも購入。逝去するまでこの個体を所有してきた
じつは1977年11月にリリースした、彼の代表作のひとつとされるアルバム「スローハンド(Slowhand)」のジャケットのアートワークでは、右半身が損壊したこの365BBの写真が使われている。
現オーナーの手元ではキッチンで過ごしてきた
そしてこの365BBは、1975年10月3日に現オーナーの所有地に移送。修理され、現在の「ロッソ(赤)」にリペイントされる。この修復作業は、1976年6月までに完了したのだが、新車から現在に至る走行距離はわずか1万4900マイル(約2万3800km)に過ぎない。なぜなら、その生涯のほとんどを現オーナー自宅のキッチン(!)で過ごしたからである。その来歴ゆえに、クラムシェルナンバー「172」が四隅にあり、エンジンとギアボックスのナンバーもオリジナルのオーダーシートと一致している。つまりはマッチングナンバーであることも、重要なトピックといえよう。
故人の遺品としてオークションに出品されたこの365BBは、最近カムベルトの点検が行われたばかりとのことながら、長年にわたり売り主の自宅に保管されていたため、適切な再メンテナンスとシェイクダウン走行が必要とのことであった。
ある意味、世界一有名な365BBとなったこの個体に対して、ボナムズ・オークション社では公式オークションカタログ内で
「ロックミュージックの歴史の一部として永遠に残るであろう有名で希少な右ハンドルのフェラーリを、低走行距離で手に入れるまたとない機会」
と謳うとともに、17万5000ポンド~27万5000ポンド(邦貨換算約3290万円~約5170万円)という、かなりレンジの広いエスティメート(推定落札価格)を設定。そして4月14日に行われた競売では、17万8250英ポンド、日本円に換算すると約3340万円で落札されることになったのだ。
元ベリーマンの365BBよりもお買い得……?
蛇足ながら「ミュージシャン×フェラーリBB」といえば、RMサザビーズ英国本社が2021年5月に開催したオンライン限定オークション「OPEN ROADS, MAY」。そこには、オルタナティヴ・ロックの世界的スーパースター「コールドプレイ」のベーシスト、ガイ・ベリーマンから出品された365BBが、20万9000ポンドで落札されたことは記憶に新しい。
現在の国際市場における1970年代のフェラーリとしては不利になりがちな、右ハンドル車であるという条件は双方とも変わらず。ただし、元クラプトン卿の365BBに事故歴があることやボディの色替えを行っていること、あるいは走行可能な状態に戻すためには一定の整備が必要であるという悪条件があるのは重々承知している。
それでも、元ベリーマンの365BBよりも約3万ポンド安価で落札されたことを思えば、今回のボナムズでの落札者は、とてもリーズナブルな買い物ができたのでは……? と思わずにはいられないのである。
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みんなのコメント
クラプトンが新車で買ったファーストオーナー車だという事はあまり考慮されていない値段に思える。
同時代のライバルだったカウンタックは億を軽く超えるプライスが付いている事を思うと、BBは安いなぁと思う。
この値段なら、欲しい!