現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > BEV一辺倒のようにみえる中国だがそれは思い込み! 政府も「マルチパスウェイ」を推し進めている

ここから本文です

BEV一辺倒のようにみえる中国だがそれは思い込み! 政府も「マルチパスウェイ」を推し進めている

掲載 19
BEV一辺倒のようにみえる中国だがそれは思い込み! 政府も「マルチパスウェイ」を推し進めている

 この記事をまとめると

■上海市内にはBEVも多いが、ICE車やHEV、PHEVも意外なほど多く走っていた

コロナ禍前は広すぎて回りきれなかった上海モーターショーが……あれ? 中国経済の停滞を感じさせる若干の寂しさ

■中国各地で開催されるモーターショーでもBEV以外の技術展示が目立つ

■政府は地域差に応じて多路線戦略を採用し、柔軟な移行を図ろうとしているのかもしれない

 日本での報道とは異なる印象を受ける中国の実情

 日本国内での報道を見る限りは、中国における新車販売台数のなかでNEV(新エネルギー車/BEV[バッテリー電気自動車]、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車])が全体の4割になっている、ということもあり、中国へ行けば街を走るクルマはほとんどBEVのような印象を受ける。

 だが、実際に中国の上海に訪れると、確かにBEVはよく見かけるが、それよりも意外なほどICE(内燃機関)車をよく見かけたことに驚いた。

 また、中国ではキャッシュレス社会が普及しており、スマホアプリ以外はほとんど使えず、クレジットカードはおろか現金の支払いなどもってのほか、という報道もよく目にしていたのだが、到着した空港のインフォメーションカウンターにいる女性に聞くと、「現金も使えますよ」と意外な答えが返ってきた。

 現地でタクシーに乗った際に、筆者が「スマホ決済で」と伝えると、かなり驚いた様子で決済準備をするドライバーが多かった。日本人に限らず、外国人はいまだに現金決済してくることが多いのかなあ、などとも感じた。日系デパートでは現金だけではなくクレジットカードも使えるので、場所は限られるもののすべてがスマホ決済というわけではないようだ。ただし飲食店では、スマホでオーダーしてスマホで決済するというフローが大衆的な店ほど徹底しており、現金決済は難しいようだった。

 最新の完成車やその技術、自動車部品などが展示される上海モーターショー(上海国際汽車工業展覧会)でも、各メーカーの展示ブースを覗くと、新興BEV専門メーカーなどは別として、総合メーカーに近い規模の大きい中国メーカーではHEVやPHEVのほうが多く展示されているように見えた。北京や上海、広州あたりの中国3大モーターショーでは、よりその傾向が高い。技術展示も積極的に行われているのだが、そこに展示されているものはハイブリッドシステムなどが目立っていた。

 タクシーやバスは、諸外国では真っ先にフル電動化の対象になりがちなのだが、上海市内の路線バスでは、EVモデルはコロナ禍以前から走っているような車種が多く、コロナ禍前には見かけなかったような新しい車種ではPHEVモデルが多かった(とはいえ、ほぼBEV走行していたようだが)。また、トロリーバスはリチウムイオン蓄電池を搭載しており、架線のある道路で蓄電して、架線のない道路では蓄電した電気を使って走らせているようだった。タクシーも基本はBEVのようなのだが、HEVやICEも新車も含めてまだまだ多かった。

 中国ではBEVに頼り切らないマルチパスウェイが主流となるか

 上海モーターショーでは、外資・中国メーカーを問わずエンジンの展示も目立っていたのだが、とくにフォルクスワーゲンブースでは、歴代のエンジンがずらりと並んで展示されていた。その光景は、まるで開き直って「エンジンならお任せを」と主張しているようであった。

 そのフォルクスワーゲンブースに、ラヴィーダというモデルが展示してあった。2008年に中国市場限定のセダンモデルとして初代がデビューしているのだが、展示されるのはいまや3代目となり、その姿を見て同窓会で久しぶりに旧友に会った気もちになった。しかも、いまだにマイルドハイブリッドでもない純粋なガソリンエンジンのみを搭載するとのことで、「中国もまだまだICEなんだなあ」とつくづく感じてしまった。

 中国政府としても、いずれは完全電動化ということは考えているだろうが、欧州のように先走っているわけでもない。いわば「マルチパスウェイ」を政府が推し進めているのである。国土が広く、沿岸部と内陸部では環境がまったく異なる中国では、ある日突然ICE車の販売を禁止する、というわけにはなかなかいかない。

 前出のラヴィーダは、日本車でいえばトヨタ・カローラくらいのサイズのモデルとなる。その価格は、初代モデルのデビュー当初は約7万元(当時のレートで100万円前後)だったのだが、3代目モデルでもウェブサイトを見ると期間限定で6万9800元(約139万円)、平時でも7万9990元(約159万円)となっており、円換算すると為替相場の関係でそれなりに高くなっているが、中国元ベースでは17年前とそれほど価格が上がっていないことにも驚いた。

 BEVが普及している中国とはいえ、同じフォルクスワーゲンが販売する最小BEVのID.3は12万9888元(約259万円)からとなっているので、BEVに軸足を置きながらも、環境負荷低減や燃費性能向上を果たしたICE、HEV、PHEV、BEVから消費者の懐具合などに合わせて選んでほしいとしているのが中国の現状のように見える。

 中国は強権発動のできる政府体制だが、欧州のようにそれをしないところは、ICE車では西側先進国のあとを追いかけることしかできなかったが、BEVで主導権を取りたいという部分と、自国の自動車市場とはわけて物事を考えているため、というようにも見える。

 上海市内では、「こんな古いクルマが」と思うような低年式車を意外なほど見かけることができる。これが地方部へ行けば、さらに目立ってくることになるだろう。このようなユーザーには、とりあえずエミッション性能の高い最新ICE車へ乗り換えてほしいという部分もあるのかもしれない。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

かつては「上級人民」しか買えなかった中国の「紅旗」! 最近「ちょっとお金もち」なら買ってもOKなラインアップを増やしていた
かつては「上級人民」しか買えなかった中国の「紅旗」! 最近「ちょっとお金もち」なら買ってもOKなラインアップを増やしていた
WEB CARTOP
トランプ関税による貿易戦争は中国国民に関係なし!? いまだテスラは憧れのクルマとして人気高し!
トランプ関税による貿易戦争は中国国民に関係なし!? いまだテスラは憧れのクルマとして人気高し!
WEB CARTOP
かつてVW天国だった中国のタクシー! いまや地元メーカーのBEVだらけになっていた!!
かつてVW天国だった中国のタクシー! いまや地元メーカーのBEVだらけになっていた!!
WEB CARTOP
中国製BEVの何が優れているのか。バンコク国際モーターショーで見た中国車の実力とは?
中国製BEVの何が優れているのか。バンコク国際モーターショーで見た中国車の実力とは?
レスポンス
アメ車に乗ると「売れない理由」がジワジワ見えてくる! 起死回生を図るならBEVで心機一転イメチェンしかない!!
アメ車に乗ると「売れない理由」がジワジワ見えてくる! 起死回生を図るならBEVで心機一転イメチェンしかない!!
WEB CARTOP
率直に言う EVは「ハイブリッド車」を滅ぼすだろう
率直に言う EVは「ハイブリッド車」を滅ぼすだろう
Merkmal
「BEVバスへの入れ換え? そんなお金ないよ!」 経営が苦しい「バス事業者」の本音
「BEVバスへの入れ換え? そんなお金ないよ!」 経営が苦しい「バス事業者」の本音
WEB CARTOP
アルピーヌ、高級ブランドの地位確立へ邁進 20年で「ポルシェの真のライバル」目指す
アルピーヌ、高級ブランドの地位確立へ邁進 20年で「ポルシェの真のライバル」目指す
AUTOCAR JAPAN
日本から流出するのは80&90年代国産スポーツだけじゃない! いま世界のコレクターから「日本のポルシェ」が狙われるワケ
日本から流出するのは80&90年代国産スポーツだけじゃない! いま世界のコレクターから「日本のポルシェ」が狙われるワケ
WEB CARTOP
やっぱり中国はこうでなくちゃ!? クルマもバイクも歩行者お構いなしの「カオスっぷり」はまだまだ健在だった!
やっぱり中国はこうでなくちゃ!? クルマもバイクも歩行者お構いなしの「カオスっぷり」はまだまだ健在だった!
WEB CARTOP
部品はおろかボディ全体まで3Dプリンターで作られるなんて話も! その後自動車業界の「3Dプリンター」の活用ってどうなった?
部品はおろかボディ全体まで3Dプリンターで作られるなんて話も! その後自動車業界の「3Dプリンター」の活用ってどうなった?
WEB CARTOP
ホンダはやっぱり「電動化」と「電脳化」を推し進める! この先のホンダがどうなるのか三部社長に直撃して考察!!
ホンダはやっぱり「電動化」と「電脳化」を推し進める! この先のホンダがどうなるのか三部社長に直撃して考察!!
WEB CARTOP
「雷克薩斯(レクサス)」「馬自達(マツダ)」「森林人(フォレスター)」! 上海ショーに行ったら中国名物の「当て字の漢字表記」が減りつつあってちょっと寂しいぞ!!
「雷克薩斯(レクサス)」「馬自達(マツダ)」「森林人(フォレスター)」! 上海ショーに行ったら中国名物の「当て字の漢字表記」が減りつつあってちょっと寂しいぞ!!
WEB CARTOP
そういや子どものころのバスは後ろにも扉があったぞ!? 路線バスから「3扉車」が消えたワケ
そういや子どものころのバスは後ろにも扉があったぞ!? 路線バスから「3扉車」が消えたワケ
WEB CARTOP
電気自動車がエンジン車に勝っているところを探したら……あまりに多すぎてEV時代も悪くない気がするぞ!
電気自動車がエンジン車に勝っているところを探したら……あまりに多すぎてEV時代も悪くない気がするぞ!
WEB CARTOP
なんとBYDが自社開発……パワー半導体でも中国が猛威を振るうのか!?
なんとBYDが自社開発……パワー半導体でも中国が猛威を振るうのか!?
ベストカーWeb
【中国】250万円級! 日産「新型“クーペ”セダン」が販売好調! たった1か月で「1.7万台も受注」の新型「N7」日本導入の可能性はあるのか
【中国】250万円級! 日産「新型“クーペ”セダン」が販売好調! たった1か月で「1.7万台も受注」の新型「N7」日本導入の可能性はあるのか
くるまのニュース
トヨタ「EV7車種投入」は本気か?──米国EV市場“逆風下”でなぜ反転攻勢? 「マルチパスウェイ」戦略が迎える転換点
トヨタ「EV7車種投入」は本気か?──米国EV市場“逆風下”でなぜ反転攻勢? 「マルチパスウェイ」戦略が迎える転換点
Merkmal

みんなのコメント

19件
  • h_s********
    まあ、軍事を考えたらBEV一辺倒は無理があるからね。

    エンジン技術が無いと相当厳しいのが軍事、戦車や大量のトラックでの人員、物資輸送で電気は非現実的で、エバの様にケーブル引っ張ってとか、何処にでも電源がある状況の戦場なんて有り得ないから、当然の様に軍事ではエンジン開発は必須です。

    エンジンで西側に追い付く為に西側のエンジン開発を遅らせる必要もある。

    エンジンも西側を抜いたとか言ってる人がいるけど、そのエンジンが必要な必要な国に何故ICEを作って輸出しないのでしょう?
    未だ、世界の車の販売ではエンジン車が大半を占めているのにね。

    答えは簡単です。まだまだ技術不足だからです。
  • duy********
    気が遠くなるほどの夥しい廃棄バッテリー。
    不完全な処理と隠蔽体質。
    苦悩する光景を連想。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

202 . 9万円 251 . 8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

54 . 0万円 450 . 0万円

中古車を検索
トヨタ カローラの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

202 . 9万円 251 . 8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

54 . 0万円 450 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村

OSZAR »